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特集は「岸田政権 迷走の3年

倉重篤郎毎日新聞客員編集委員が岸田政権の3つの大罪を指摘する。自民党の名門派閥の看板をなきものにし、日本の保守政治の根幹を変えてしまったこと、疑似政権交代のシステムを活かし切れなかったこと、官僚政治を復権させてしまったことを挙げ、選挙によって国民が本格的な政権交代という罰を下す必要のあることを訴える。

自民党の金権体質を改めて示した裏金問題。政治資金規正法の改正もその場しのぎのおざなりなものとなった。「政治とカネ」の問題を厳しく告発し続けている神戸学院大学の上脇博之教授が、企業団体献金と政党交付金は憲法違反であること、政策活動費は廃止すべきだと主張する。そして、金権政党ではなく主権者である国民のための制度改革を求める。

岸田政権のジェンダー政策。和光大学の竹信三恵子名誉教授が、女性活躍を謳いながら女性閣僚も少なく男女の賃金格差や女性の管理職比率の改善もみられなかったと総括し、「女性版骨太方針」も党内保守派と派閥への配慮を優先させた結果、「差別の可視化と是正」が不在だったことを指摘する。

安倍政権以上にタカ派色がにじみ出た岸田政権の安保防衛政策。軍事評論家の前田哲男氏は、バイデン政権との間で安保・防衛政策の継承と飛躍を確立させたことを、岸田政権の反憲法的な点の最たるものと指摘。憲法前文にある「共通の安全保障」「人間の安全保障」を復権させることを「護憲派」の旗印にすべきだと強調するとともに、「非核3原則」の行方を懸念する。

経済政策も迷走した岸田政権。関東学院大学の島澤諭教授が、最後までは何がやりたいのかさっぱりわからなかったと切り捨てる。日本経済の問題点として、人口減少による人手不足を非正規雇用という「悪魔の発明」で乗り切ろうとした結果、企業の競争力が衰えたことを指摘。支え手不足で今後無年金の国民が増えることが懸念され、「基本年金」の導入による年金制度の改革を訴える。

福島原発事故の教訓を忘れ、原発新増設や60年を超える運転を認めた岸田政権。龍谷大学の大島堅一教授は「原子力産業自体が衰退しきっている。日本のエネルギー政策の決定のあり方は、ブレーキとハンドルの付いていない車のようだ」と危ぶむ。脱炭素化に向けては、原発へのこだわりを捨て、再エネとエネルギー消費効率化に焦点を合わせた制度改革が必要だと主張する。

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